2021年

6月

18日

じい散歩

藤野千夜 著  じい散歩  双葉車 2020年12月

 

主人公89歳、妻88歳。主人公は散歩が趣味。妻は散歩先での夫の浮気をしつこく疑っている。長男は高校中退後、ずっと引きこもり。次男はしっかり者の、自称・長女。末っ子は事業に失敗して借金まみれ。最後の文章……今日も老いた私が、老いた妻の世話を焼いています。いざとなったら、息子たちがちゃんとするだろうなんて、そんな甘い期待はもうかけらもありません。いずれ私に介護が必要になったら、さっさと全財産を処分して、施設に入ろうと決めています。もしそれで息子たちが困るなら、困ればいい。今はまだこの家で妻の面倒をみなくちゃいけません。そこまでが私の人生の仕事、と覚悟しています。私94歳、妻は93歳になりました……

 

感想:妻が認知症へすすむ様子とこれまでたどった過去が交互に描かれる物語。懸命に過ごした時間があり、今の老いの時間がある、継続した一連の時間。笑いとばしながら受け止めて過ごしていこうと勇気が出た。

 

2021年

6月

14日

男が介護する

津止正敏 著  男が介護する 中央新書 2021年2月

 

かつて女性中心で行われてきた家族の介護。今では男性(夫や息子など)が担い手の3分の1を占める。孤立し、追い詰められた男性介護者による虐待、心中などの事件は後を絶たない。介護離職を余儀なくされる人もいる。

もっと柔軟な働き方で、もっと実情にあった介護サービスの開発によって、介護で退職しなくてもいい社会を、退職しても貧乏にならず、孤立しないですむ社会を。介護の社会化の実質化、豊富化の中で家族と介護をとらえる。援助を求めることができない人や不徳手の人たちが「助けて」と発することを無条件に支持し肯定することができる専門家や支援者、社会制度、社会規範という、本人と接点を持つ社会環境の感度こそ重要。気がつけば家族の介護を引き受けつつ生きることへの肯定感を引き出していく。

 

感想:助けてと言えない男性介護者は、経済優先の文化で長く過ごしてきて、これまでの鎧兜を脱ぎ去って家族ケアを担うという新しい文化を我が物としていく作業がしずらいのだという文章は納得できる。なぜ助けてと言えないのか不思議だったが、これまで過ごしてきた時間で弱みはみせない思考がしみついているのだとすれば納得できる。助けてと声にすれば助けはあると信じる。

 

2021年

6月

08日

今度生まれたら

内館牧子 著 今度生まれたら 国宝社 2020年12月

 

 今度生まれたら、この人とは結婚しない、70歳になつた主人公は、夫の寝顔を見ながらつぶやいた。結婚至上主義時代に生きて、将来をけて勝ち取った相手だ。夫は退職後、趣味を楽しみ、息子2人も独立した。何の不満もない老後だといえる。だが、自分の人生を振り返ると、節目々々で下してきた選択は本当にこれでよかったのか。進学は、仕事は、結婚は。あの時、確かに別の道もあった。やり直しのきかない年齢になって、それでもやりたいことを始めようとする。

 

 

感想:何があるかわからない先々のために今を犠牲にするほどバカなことはないと、息子の選択を応援する主人公の姿に納得した。趣味に夢中になると、もっとうまくなるとか、もっと強くとなり、弱気が引っ込むとのことばで、主人公がやりたいことを始める。私もやりたい蕎麦打ちを仲間ですることで気力が湧くことを実感する。

 

2021年

6月

04日

ボケ日和

長谷川嘉哉 著  ボケ日和 かんき出版 2021年4月

 

認知症の進行具合を、春(ちょっと変な・予備軍)、夏(かなり不安な・軽度)、秋(困惑の・中等度)、冬(決断の・重度)の4段階に分けて、そのとき何が起こるのか?どうすれば良いのか?を描いたエッセイ。

 

感想:家族だけでなんとかしようとせず、専門家に相談することが大切だ確信した。他人でもできることは介護のプロに任せ、家族にしかできない精神的なケアに家族は専念する。それもりっぱな介護だ、第一に尊重されるべきは、患者さんの生活を支えているご家族、介護者であるご家族も、楽しみをあきらめない、令和時代の介護に踏み出さないといけない、と すっぱり言い切る文章は、漠然と思っていたことが、すっきりして胸のつかえがとれた気がした。

2021年

6月

02日

人生のやめどき

樋口恵子、上野千鶴子 著 人生のやめどき 

        マガジンハウス、2020年9月

 

 家族のやめどき、人間関係のやめどき、社会のおりどき、自立のやめどき、人生のやめどき、自分のやめどき、考えの違う二人の対談。

孫より子どもが大事。それよりもっと自分が大事。おひとりさまの自由を手放さない新世代の祖母たちが登場した。

人生百年になったんですから、街づくりも変わるべきだし、老人は飲食店に恵まれた駅から近いところに住むべきだ。

樋口恵子からおりて、上野千鶴子からおりて、穏やかに過ごす……素晴らしい表現。

 

感想:認知症になったら、自分のやめどき、とは新しい発想だと思った。ひとつづつやめどき、を考える年代になった。